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平成23年度第10回四国老施協セミナー
四国老人福祉施設協議会・徳島老人福祉施設協議会の主催により、表題の大会が徳島グランヴィリオホテルで開催され、健祥会グループからもたくさんの職員が参加しました。初日は四国老人福祉施設協議会会長・健祥会グループ理事長 中村博彦による特別講演が行われました。
「人口激減時代、日本の社会保障は・・・」 中村博彦講演要旨
「2期目をいただき、何としても代表質問をしたいとの思いで頑張ってきたが、先般、参議院本会議においてその念願が叶った。本当に嬉しく有り難く、社会保障全般にわたって、25分間、温めて来た政策を開陳させていただいた。
四国老人福祉施設協議会会長 健祥会グループ理事長 中村博彦 |
今日本は大きな曲がり角にある。平成15年、「特養自体がなくなり、別の形、カテゴリーの介護施設も 考えられる」との当時の厚労省老健局長の発言で示された特養解体路線が、今になってはっきりと具現化されつつある。今回の介護保険法改正の目的は、地域完結型の「地域包括ケア」の推進にほかならない。そのために非効率な「24時間対応の定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が創設される。「地域包括ケアシステム」が全国すべての地域で実現可能なのか、また認知症ケアが地域住民のネットワークで担えるのかと、代表質問でも問題提起させていただいた。厚労省は認知症の実態調査すらしていない。加算取得状況が示すとおり、小規模多機能施設では認知症介護は担えない。とにかく特養をつくらないということでは、増え続ける認知症高齢者のキュア、ケアの場がない。
24年度介護報酬改定は逆風が吹き荒れた。従来型個室と多床室が大幅ダウンし、新設の多床室はさらに低くなる。これはあきらかにペナルティであり、利用者のニーズを無視している。地域包括ケアの流れの中で特養が生き残るには、もう一度存在感を示すしかない。 団塊の世代が65歳になり、社会保障の自然増は今年1兆4千億から5千億円、来年はさらに増える。この自然増をどう抑制するか、どう制度設計するかがポイントになる。少子高齢化で人口が激減し、労働力人口も激減する、肩車型社会では、56歳を分岐点として年齢が下がるほど社会保障サービスにおいて「受益」よりも「負担」の方が多い「支払い超過」となる。現在26歳(1985年・生)では、生涯収入を3億円として、約3200万円の支払い超過だ。大きな世代間格差を生んでいる制度をどう改革するか。生活保護制度の抜本改革や、高所得高齢者の扱い方、負担の見直しが必要だ。
アジアも凄まじいスピードで高齢化への道を辿っている。介護技術や機器でアジアの介護に貢献しなければならない。これだけの円高で、しかも電力料金も上がる日本からは企業は出て行って当たり前。タイの洪水で我々はニコンのデジタル一眼レフカメラの9割をタイ工場が担っていたことを知り驚いたものだ。空洞化の進む日本で、内需は介護・医療・保育だ。しかし、措置型体質のままでは成長産業にはなれない。特養において、認知症ケアやリハビリテーション、おむつゼロや水分補給が挑戦的にできている法人は約半分であり、事業体の大改革が必要だ。内需の主役として、科学的介護を実践し、新しい人材を育て、アジアに送り出そう。ニーズにかなった戦略性をもつ事業体となろう。そして地域において特養の存在感を示すために、新しい特養づくりに今すぐとりかかろう。インドネシアやフィリピンの介護福祉士候補者にも門戸を開き、四国一体となって、進化していこう。専門性科学性に立脚したサービスと地域貢献で利用者のために闘おう」。
独立行政法人福祉医療機構経営支援室 経営企画課長千葉成展氏 |
続いて、独立行政法人 福祉医療機構経営支援室 経営企画課長千葉成展氏による「新社会福祉法人新会計基準の概要と経営方針の立て方」、公益社団法人 全国老人福祉施協議会 中田清会長の「中央情勢報告」、翌7日には大和総研ホールディングス 金融・公共コンサルティング部 主任研究員 斎藤哲史氏「社会保障・税の一体改革をふまえた介護保険制度の行方」、全国老人福祉施協議会 介護保険事業経営委員会委員長 桝田和平氏「平成24年度 介護保険制度改正・報酬改定から『事業戦略』を練る」と題した講演が行われました。
全国老人福祉施設協議会 中田清会長 |
中田会長からは、「政府は負担増についてはすべてを先送りし、地域包括ケアの名の下に、財源の裏付けもないまま新サービスを創設した。これはとりもなおさず現行サービスの質が低下するということだ。前回の改定では中村博彦参議院議員の必死の頑張りでプラス改定となった。民主党政権下の今改定は、東日本大震災や長引くデフレ、経営概況調査結果や処遇改善交付金の扱いなど、様々な逆風が吹き荒れた上、介護保険に理解のある議員も少なかった。応援団を増やさねばならない。国の打ち出す在宅移行推進路線に対し、利用者のために闘わねば特養は住まいになってしまう。在宅ではできない専門性科学性に立脚したサービスを実践し、ノウハウとデータを蓄積して3年後改定に備えよう。地域貢献も大切、法人減免には全法人で取り組んでほしい。知恵も技も心もお金も使って、地域の介護力アップのリーダーになってほしい」と現場への力強いメッセージが贈られました。
大和総研ホールディングス 金融・公共コンサルティング部 主任研究員 斎藤哲史氏 |
全国老人福祉施設協議会 介護保険事業経営委員会 委員長 桝田和平氏 |
[2060年・人口8674万人・高齢者4割]という驚くべき人口激減・超少子高齢社会に向かって、制度はどうあるべきか、介護はどうあらねばならないか、社会保障制度の中に働く者として真摯に向き合わねばならない・・・そんな思いを参加者すべてが共有しながら、必死に聞き入ったセミナーでした。
[記事公開日]2012/02/10(金)