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科学的介護をめざして! 健祥会グループ30周年記念事業 徳島大学委託研究事業 発表会
2010年10月25日、国立学校法人徳島大学と健祥会グループとの間で締結された「認知症」「リハビリテーション」「口腔ケア」の3分野における研究契約が、3年の期間を終え、発表の日を迎えました。この委託研究は、医療・介護サービスの基盤強化と高品質化を図るべく、香川征徳島大学学長のご理解のもと、中村博彦健祥会グループ創始者がグループ創立30周年事業として取り組んだものです。 創始者は30周年にあたって、要介護度の重度化と認知症の増加に対応するには、介護と医療が連携し、医療・看護領域を包括した重層的なサービスを新しい介護ケアとして打ち立てることこそ必要だと考えました。要介護者の尊厳ある生活の継続と自立を支援することが、今後のサービスのあるべき姿であり、とりわけ認知症は喫緊に取り組まねばならない国民的課題であるとして、科学的アプローチによるケアの標準化をめざしたのです。 2014年3月19日、健祥会パートナーに、グループ職員、徳島健祥会福祉専門学校学生約800人が集い、創始者の意志を受け継いですすめられた研究成果が3人の研究者により発表されました。
健祥会グループ理事長 中村太一 挨拶
中村博彦健祥会グループ創始者の強い思いからスタートした徳島大学への委託研究が、本日、発表の日を迎えましたことを嬉しく思います。 団塊の世代がすべて75歳以上となり、日本が高齢化のピークを迎える2025年に向かって、介護保険利用者の要介護度は重度化し、認知症高齢者も増え続けています。老老介護、認認介護、介護離職などの言葉に示されるように、介護が家族に大きな負担を強いています。しかし、認知症は予防法も治療法も未だ研究途上の疾患であり、介護においては、確立された専門性、ケアの統一がないというのが現状です。
予備軍も含めると65歳以上の25%にのぼるといわれる「認知症」、高齢者の自立を阻む最大要因である転倒骨折からの「リハビリテーション」、高齢者の健康維持とQOLの向上に大きな役割を果たす「口腔ケア」、3つの分野でエビデンスに基づいたサービスの構築と標準化を図ることを目的として研究がすすめられ、3年を経て、今、確かな実を結んだものです。 この成果を健祥会グループ各施設において嘱託医・歯科医とも共有し、科学的介護として実践してまいります。さらには公益社団法人全国老人福祉施設協議会の会員施設へも届け、高品質介護サービス構築に役立てていただきたいと思います。 研究に携わっていただいた徳島大学の皆様、ご協力いただいた全国老施協の皆様、利用者・入所者・家族様、グループ職員、すべての関係諸氏に心より感謝申し上げ、ご挨拶といたします。
香川征 徳島大学長 挨拶
日本は世界に類を見ない超高齢社会であり、どこにもお手本とできる国も制度もありません。そして今、介護は明日の日本を考える上で重要なキーワードとなっており、医療との連携も必須です。2010年10月25日、この委託研究の機会をつくってくださった中村博彦前理事長ととともに臨んだ調印式がついこの間のことのように思い出されます。研究費をいただいて取り組んだ3つの研究がすばらしい成果を見ました。発表をお聴きになって、ご意見、ご批評をいただけましたら幸いです。
演題1.口腔ケア 多職種連携による科学的介護を目指した口腔ケア支援ITCシステム
演者:中野雅徳 徳島大学名誉教授
座長:伊賀弘起 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部教授
徳島大学におけるICTプロジェクトと連動し、クラウドコンピューティングを活用した口腔保健業務支援システムを構築。モデル施設において、試験運用・実証研究を行った結果、口腔ケアの効率化と介護職の意識向上に寄与した。また科学的介護を支えるインフラとして作成された介護者のための口腔ケアアセスメントシートは、口腔衛生状態・機能状態、ケアに対するリスクの評価が簡単に行え、嚥下障害のスクリーニングの信頼性も高く、日常のケアに有用なアセスメントツールであることが口腔ケアの重要性とともに示された。
演題2.認知症ケア 施設入所中の高齢者の介護負担度に影響を与える要員の検討
演者:住谷さつき 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部准教授
座長:檜沢 一夫 徳島大学名誉教授
健祥会グループの施設(特養13施設、老健6施設、グループホーム8施設)に入所中の高齢者669人(男性153人 女性516人 年齢86.16±7.13歳)に対して、認知機能、BPSD、ADLなどと介護負担度との関連を調査。このうちすべてのデータが得られた353人(男性84人 女性269人 年齢85.87±6.93歳)について評価分析を行った結果、介護負担度との相関、施設形態による差異などが見られ、介護負担度に影響を与える要因解析がすすんだ。また介護者にとって負担となる行動と心理の症状(BPSD)への対応、薬の有用性とリスクの分析もなされた。世界的にも例を見ないほどの大規模調査により、科学的介護の裏付けとなるデータが得られた。
3.リハビリテーション 社会福祉法人入所者における転倒予防の研究
演者:加藤真介 徳島大学病院リハビリテーション部 教授
座長:齋藤史郎 徳島健祥会福祉専門学校長
高齢者にとって転倒骨折は脳梗塞と同じくらいのリスクを伴うことから、高齢者ケアにおいては転倒予防が重要である。健祥会グループ全施設入所者2024人を対象に転倒状況調査を行ったところ、重大な外傷の55%を大腿骨頚部骨折が占めていた。加齢にともなうサルコペニア(骨格筋量と骨格筋力の低下)予防についてはビタミンDが有効であり、大腿骨頚部骨折を予防するため、施設入所者の協力のもと、ビタミンD摂取による転倒予防研究が現在も進行中である。また、認知機能の低下と転倒の関連について、起居動作や歩行手段の精査など、身体機能、精神機能に着目した調査研究をすすめたい。
3時間に及ぶ発表に、会場の学生、職員は熱心に聞き入り、質疑応答の時間には、現場に即した活発な質問があがりました。今、介護現場が専門性の確立、ケアの統一に向けて確かに動き出していることを感じさせてくれるひとときでした。最後に齋藤史郎 徳島健祥会福祉専門学校長が謝辞を述べ、発表会を終えました。
齋藤史郎 徳島健祥会福祉専門学校長 謝辞
香川征 徳島大学学長と中村太一 健祥会グループ理事長にご臨席いただいて発表会が実現しました。徳島大学と健祥会グループの協働の賜物として、新しい知見、根拠に基づく成果を得ることができ嬉しい限りです。科学的介護は健祥会グループ創始者が提唱し、全国に広がったものですが、この研究により裏付けを得ることができたといえます。今後は、さらに研究をすすめ、現場に還元し、質の高い介護医療が提供できますよう期待いたします。
健祥会グループはこのたびの連携研究のみならず、様々な分野の専門家と手を携え、新しい介護技術の開発と快適な介護環境の創造を推し進め、心のぬくもりに裏打ちされた先進介護を地域社会に届けてまいります。
[記事公開日]2014/03/20(木)