この記事は公開から1年以上経過しています
「絆の老施協!創ろう科学的介護、新たな福祉」
第68回全国老人福祉施設大会高知大会報告
「絆の老施協!創ろう科学的介護、新たな福祉」とテーマを掲げて、第68回全国老人福祉施設大会が高知県高知市にて開催されました。全国から2100名、健祥会からも80名の職員が参加し、1日目と3日目の全体会、2日目はテーマ毎の5分科会において、講演、講義、実践発表などに参加、中身の濃い3日間を過ごしてきました。
初日全体会では開会式典のあと、厚生労働省高齢者支援課の深沢典宏課長による講演「介護保険の課題」、公益社団法人 全国老人福祉施設協議会(全国老施協) 中田清会長による基調報告「絆の老施協!創ろう科学的介護、新たな挑戦」に続き、昨年龍馬ブームに沸いた高知県立坂本龍馬記念館館長 森健志郎氏の記念講演「龍馬伝が残したもの〜絆ぜよ〜」、さらに全国老施協常任顧問・参議院議員・中村博彦健祥会グループ理事長が「日本復興・2020年日本の社会保障制度は」と題して課題提起を行い、全国の仲間に向かって奮起を促しました。
課題提起要旨 「日本復興・2020年日本の社会保障制度は」
全国老施協常任顧問・参議院議員・中村博彦健祥会グループ理事長
今の日本経済の惨状を知ってほしい。米経済誌フォーブス(アジア版)が毎年発表する、アジア太平洋地域で「最も収益力が高い優良企業」50社の中に、2005年には13社リストされていた日本企業が、2011年には1社もなかった。中国は23社だ。これが今の日本だ。国内では内需が落ち込み、製造業は海外へシフトしている。税収は20年前に49兆円であったものが今は30兆円。その一方で平成24年度概算要求では社会保障費の自然増は容認されており、一般会計での要求総額は100兆円に迫っている。この状況下、介護現場で働く私たちはどうあるべきか。
内需が製造業から医療・介護・保育にシフトする中、私たちの事業体は雇用を担い、地域活性化の核とならねばならない。そして消費税を社会保障の財源に充てる前に、制度の抜本改革がなされねばならず、規制の撤廃、供給体改革が求められる。民間活力をしっかりと活かすことも必要だ。私たちには内需を担う成長産業として、効率化と生産性の向上が喫緊の課題なのだ。
42万人待機者が解消されぬまま、地域包括ケアシステムの確立に向けて脱施設・在宅シフト路線が推進されている。平成24年の介護報酬改定においても、小規模多機能と24時間型以外は削減の方向であり、多床室の室料や定員規模別報酬体系等も俎上に上っている。介護職員処遇改善交付金の扱いもある。いずれにせよ、介護サービスの質の評価(加算)で施設の報酬収入が大きく変わる時代となる。
このような状況下で施設サービスを守るために、私たちが変わらねばならない。科学的介護づくりへの挑戦も、地域活性化の核としての拡大最生産も、人材育成も、すべてトップの熱なしには動かない。5年先戦略も持たず、収支管理もできない法人トップ、経営刷新や新サービスの構築もできない理事長は去っていただくしかない。 特養が必要とされる施設として生き残るために、新しい時代の介護のスタンダードをつくろう。おむつゼロ、認知症ケア、リハビリテーション、口腔ケア、看取り介護など、科学的介護に挑戦しよう。養護、経費老人ホーム復権のためにも頑張ろう。坂本龍馬、勝安房守になって、新しい福祉の時代を築いていこう!
記念講演要旨 「龍馬伝が残したもの〜絆ぜよ〜」
高知県立坂本龍馬記念館館長 森健志郎氏
龍馬記念館は年間来館者が13〜14万人、歴史上の一人の人物を顕彰する記念館としては日本一である。龍馬伝の年は46万人という熱狂だった。訪れる人はみんな龍馬が大好きで、10回20回というリピーターが多い。人生の節目に龍馬に会いにくる。龍馬に挨拶し、教えを請い、励まされ、龍馬の吹かれた桂浜の風に吹かれてまた、日常へと戻っていくのだ。
土佐は幕末に多くの逸材を輩出したが、ジョン万次郎もその一人。捕鯨船に助けられアメリカに渡り、広い世界を見て自由と平等を知った。龍馬は帰国した万次郎を取り調べた河田小龍を通して、万次郎の異国での体験などを伝え聞く。勝海舟は咸臨丸で同船した万次郎から英語やアメリカの知識などを学んだ。勝海舟は龍馬に世界情勢と攘夷論の愚かしさを説き、龍馬は海軍の創設とその費用を生み出す貿易の必要性を論じ亀山社中(のちの海援隊)を組織する。年齢も身分も、乗った船も渡った海も違う3人の思想・・・郷士であった龍馬の自由と平等、役人であった勝海舟の公平、ジョン万次郎の「E.PLURIBUS.UNUM」(多数から作る一つ)がすれ違い、呼応し、時代が動いたのだ。
記念館には龍馬を慕ってさまざまな人が訪れてくれる。もっとも印象に残っているのが、李登輝氏。1m90cmの長身に真っ黒のサングラス、民族を率いる人のオーラを感じた。非常にフレンドリーな方だった。「日本も台湾も変革のときであり、とても揺れている。揺れの原因は、政治が職業になったことだ。龍馬に私心はなかった。国のため、志のために命を賭けた。私信なく命をかけることのできる政治家がひとりでもいれば、国が揺れることはない、日本はアメリカにも中国にもへつらうべきでない」と、達者な日本語で語ったものだ。もう一人が孫正義氏。さまざまな軋轢の中、闘いながら走り、決断決断の日々の中にある孫氏は私に「どんなに怒ろうが、嘆こうが、人間の本質はやさしさですね」と笑顔で語ってくれた。龍馬は出会いの達人だったが、その龍馬がつくってくれるたくさんの出会いに感謝しながらの毎日である。
今年、「なぜ、今、龍馬なのか」というフォーラムをアメリカ各地で開いた。そして先月、NYウォール街を訪ね、「1%の彼らに99%のわれわれ」が抗議の旗を振るデモを見た。龍馬の生きた時代の「ええじゃないか」の群衆を見た思いだった。同行していた坂本家の9代目、坂本登氏は「まさに幕末ですね」と感慨深くつぶやいたものだ。今また、時代の変わり目であり、今こそ、龍馬を世界に発信するときなのだ。
2日目は下記の5つの分科会に分かれてそれぞれのテーマで、シンポジウムや研究発表、実践報告等が行われました。
●第1分科会<創ろう!科学的介護>
●第2分科会<供給対改革・・・社会福祉法人、特養ホームに求められるもの〜安心、安全の信頼ブランドを築くために〜>
●第3分科会<居住型施設の動向と、これからの経費・ケアハウスサービス>
●第4分科会<地域包括ケアシステムの動向と在宅サービスの課題
●第5分科会<「養護復権」への課題
第1分科会においては、徳島大学と健祥会の共同研究発表があり、徳島大学病院リハビリテーション部高田信二郎氏による「介護福祉施設におけるリハビリテーション」、徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部松山美和氏による「VFでみる摂食・嚥下障害と食事介助のポイント」が発表され、科学的介護元年の大会にふさわしい内容となりました。
また3日目の全体会では「絆の老施協!地域の砦として・・・介護現場の苦闘 〜東日本大震災から学ぶもの〜」と題してのシンポジウムに、被災地から5人のシンポジストが参加。困難な体験の中、被災地で発揮された老施協の絆や地域ネットワークのもつ大きな力について、また、現行法の中での臨機応変な措置の必要性なども語られ、現状と今後の課題などが報告されました。
最後に大会宣言を採択して3日間の日程を終えました。新しい福祉の時代を築くという大きな使命をしっかり胸に刻み、施設に持ち帰って、科学的介護、供給体改革に取り組んでまいります。
[記事公開日]2011/11/13(日)